2016年1月「ライティング・ジャパン」で出展されたLED関連製品で目を引いたのは「オープンプロトコル、無線、IoT」をキーワードにした製品であった。照明はこれまで半導体技術が融合し、市場に変化をもたらした。LED照明業界では次の変化を待っている。
照明の世界はLED照明になってから照明技術と周辺技術が融合した製品展開が目まぐるしい。そして今後無視できない「オープンプロトコル、無線、IoT」を利用した製品をいくつか紹介する。
IoT技術によって、様々なモノやデータがインターネットに接続し、相互的に通信機能を持つなど、身近にあるあらゆるモノが繋がり始めた。もちろん照明もその一つだ。照明分野では照明制御システムや可視光などの採用が進んでおり、今後ますますその技術は進化すると予想され、照明は単なる灯具からネットワーク製品として新しく生まれ変わる。
今回の展示会では照明制御システムで日本市場でも浸透し始めたDALIが目を引いた。同製品はIEC規格のオープンプロトコルだ。現在、世界中に会員が広がっており、日本でも参加する企業が増えている。
世界に広がるDALIの会員
写真:DALIを各地のホテルやビル群への導入実績をもつRayos Ltd./ Helvar System Partner in Japanの展示ブースには多くの来場者が押し寄せた。また、ルネサスエレクトロニクスと共同で製品を展示した。
昨年から日本でもDALIを採用する企業が増えている。しかし、照明制御システムを導入することは容易ではない。DALIは基本的には配線工事が必要な照明制御システムだ。そのためネックになるのは工事費用だろう。それを解決する一つの方法としてこれまでは無線技術を採用していた。しかし、より遠い場所などでは無線が届かないというデメリットもあった。今回の展示で目を引いた技術はコスト削減と広範囲でDALI制御を可能とするPLC技術であった。
同技術を展示したのはルネサスエレクトロニクスだ。PLC技術とは電力線通信(
Power Line Communication)の略である。既存の電力線を利用してデータ通信(インターネット接続)をする技術だ。
PLC技術は新しい技術ではないが、LED照明のシステム化に適用され始めたのは最近だ。
インターネット線のように出入り口が1か所ではなく、電源があればコンセントなり、電球の口などすべてが出入り口になることが出来る。
いわゆる新しく照明制御用に信号線の設置が必要なく、既存にある電力線を利用できるため、工事費用の削減や期間短縮が出来る。
今回展示された「Flexible PLC」はスマートメータやHEMS機器向けに実績をもつルネサスエレクトロニクスのPLC技術とDALIを融合させて照明制御を行うものだ。
同社では国際標準PLCの規格であるG3およびPRIMEに対応したPLCモデムLSIを使用しDALIを実現する。ソフトウェア変更がフレキシブルに対応できる通信アルゴリズムの改良も可能だ。
1つのPLCモジュールで通信可能設置距離も1000mまで実証実験で確認されている。このため、ビル内や街路灯などの長距離配線を必要とする照明もネットワークケーブルがなくとも接続できるのだ。
写真:PLCモジュール。使用したい機器にPLCモデムを接続し、PLCモジュールのコンセントに差し込むだけでデータ通信が出来るようになる。
ルネサスエレクトロニクスは、マイコンや電源ICの提供を行っている企業だ。同社は自動車向けマイコンでも有名だが、今後、他の分野に向けた製品の供給比率も上げる。同社では照明用の部品供給も行ってきたが、今回、同社はPLC技術を利用し照明分野での市場拡大を狙う。これについて、ルネサスエレクトロニクス第二ソリューション事業本部 産業第一事業部長 傳田明氏は「昨今、IoTやIndustory4.0のキーワードで盛り上がってきているが、弊社でも最大のチャンスととらえている」とした。その一つの対象分野として照明の分野も狙っていく。これまでの照明は単なる機器の延長でもあったが、昨今の照明はネットワークで繋げることが重要なファクターを持ち始めた。そのため、同社では2年前からHelverと組み「繋げる」技術を提供してきた。今回参考出展させた「Frexible PLC」は、同社がこれまで提供してきた無線技術と電源の技術に電力線通信のノウハウを加え提供する製品だ。今回の製品のようにルネサスが培ってきたノウハウの“位置づけを変える”ことにより、新しい付加価値を新規適用分野に提供し、同社製品の利用拡大を狙う。同製品について「この重要性を一番理解するのは施工メーカーやビルオーナーであろう」と同氏は語る。同社では単に部品の供給をするのではなく、全体ソリューションの提供を目的に2016年後半にも販売する予定だ。
DALIが日本国内での採用が拡大する中、NTTファシリティーズでもDALIの採用した「FIT LC」始めた。理由の一つが「オープンプロトコル」だ。同社はDALIについて「オープン設計であるため、設計者思想を反映でき、設備と連携して制御できる」点を評価した。「FIT LC」は無線システムを採用し、PLCと同様こちらも信号配線は不要で電源線を利用し機器を制御する。
展示会当日は、Rayos Ltd./ Helvar System Partner in JapanのブースとNTTファシリティーズのブース間で無線システムを使い照明制御のデモも行っていた。
このように異なる企業とブース間でデモ体験が出来る新しい試みは初めてのことだった。
写真:NTTファシリティーズのブースから50m程度離れたRayos Ltd./ Helvar System Partner in Japanのブースの照明制御デモ
■ソニー、リビングの制覇を狙う
ソニーは、スピーカーに加えマイク機能や、テレビやエアコンをスマートフォンなどで操作することが出来るマルチファンクションユニットを専用の照明器具に取り付けることにより、マルチファンクションライトとなる照明を展示した。
これまでにも他社製品として音楽が流れるシーリングライトや雰囲気により色温度や、マルチカラーに変化する製品があった。
同製品の特徴について、製品開発を担当するL-Gadget事業室の横沢信幸氏は「照明からではなく、生活スタイルを考えた時に出て来た答えをもつ照明」であり、「部屋の中心にソニー製品をと考えた時に、必然的にそれは天井であった」とも語る。照明からというより、家庭内コミュニケーションを図るデバイスをどこに置くかと考えた時に必然的にリビングの中心にある、照明器具の空間を利用だったということだったのだ。
製品設計の方向性として、ターゲット層は30代~40代の子供をもつファミリー層だ。家庭における照明購入の決定権は主婦にあり、子育て世代の主婦に選んでもらえるような製品に仕上げたという。
家族のコミュニケーションを助ける機能として、ユニットを設置した部屋に対して、別の部屋からスマートフォンを使用して通話が出来る機能も搭載する。ダイニングやキッチンから、子供部屋と会話なども可能な「会話機能」やスマートフォンのアプリを経由してユニットの伝言メッセージを録音すると、家族が帰宅した際に人感センサーが反応し、メッセージが再生されるなどの機能ももつ。この他にも部屋の異常をモニタリングすることや、外出先から自宅の照明をコントロールすることも出来るなど、照明メーカーの発想ではなく、ソニーだからこと出来るコミュニケーションとエンターティメントを詰め込んだ製品のようだ。いわゆる家庭内ミニIoTの完成だ。家庭内にあるあらゆるデバイスがソニーのマルチファンクションユニットで繋がるのだ。
図:会話機能や伝言機能のイメージ。ソニープレスリリースより
これまで照明とスマートフォンの無線接続はBluetoothが多く使われてきたが、同製品はWiFiを利用して接続する。それは外出先からも操作も可能となるようにしている。搭載されているマイクやスピーカーで会話を可能とさせるためだ。
写真:照明器具から外した状態の、マルチファンクションユニット
写真:マルチファンクションユニットを専用のLEDシーリングライトに装着した状態
写真:マルチファンクションユニット内部の構造。人感センサー、照度センサー、湿度温度センサー、赤外線コントローラーなどが搭載されるほか、メモリーカードなどの挿入も出来る。スピーカーとマイクは標準搭載だが、マルチファンクションユニットへは監視カメラや他のデバイスも後付けで搭載できるなどカスタマイズも可能だ。
同製品は、2016年前半に商品化を目標としている。同製品を担当するのはデバイスソリューション事業部 新規事業部門 L-Gadget事業室だ。デバイスソリューション事業部は基本部品を供給する部署だが、今回は最終製品を流通させる。そのためにL-Gadget事業室が特別に設置された。この“L”はLightingの“L”だ。
販売ルートも電材卸事業者や住宅会社へ販売をするなど今回は異例スタートのようだ。
ソニーが照明を出したとことに注目するよりは、ソニーが新しい流通ルートで新しい方向性でリビングを制覇できるのか注目したい。
ソニーはこれまでテレビやスピーカーなどリビングにおいて壁面を制覇してきた。照明とソニーのマルチファンクションユニットが癒合することにより壁面から天井までをソニー製品がカバーする。ソニーはリビング全体を制覇は成功するか?今後の展開が期待される。
コメントをお書きください